2023/10/31 17:35
前回に引き続き、ゲストは篠崎春花さんです。
たくさんのサンプルを持ってきていただき卒業制作についてお話しいただいた後編です。
C子:このたくさんの量のサンプルが制作の苦心を物語っていますね。(サンプルを見ながら)


持参していただいたサンプル以外の画像の資料もたくさん
篠崎:発泡プリントが実用的かと言われたら、そうでもないところが難しくて。技法として確立しているし布につかうのは当たり前のものだけど、全面に使用すると、摩擦や汚れ、肌触りなど、製品としてはなかなか難しいのかなと。もしかしたらこういう服とか椅子カバーとかあったら面白いかもしれないけど、手放しで進められないなと、、。
どんな最終形態ならこの布の良さを最大限に引き出せるのだろうと、悩みました。
光を通し透けると綺麗であることを活かしたかったので、「かたちの面白さ+透ける」はどうかな、、そうしたら、カーテンや空間を区切る、仕切るものとかいいなと。
ただ、カーテンという名前をつけて形式ばったかたちをとるというのが自分の中でしっくりこなくて、、プロダクトをつくるよりはニュアンスをつくるような、どちらかというと空気感を作りたい、という流れになっていきました。

空間を区切る、仕切るなどさまざまな検証を行なっている様子
C子:さまざまな悩みのプロセスを経てるんですね。 ドットという模様についてはどこから出てきたんですか?あと色はなぜ白のみにしましたか?
篠崎:この布で心地よい空気を作りたいと、”ゆらぎ”をキーワードに決めました。ゆらぎをどのように表現していくかとなった時に、小さなものの反復・連鎖の現象を抽象化しようと考えました。
線とかではなくて、細かい粒、粒子の集まりが、風や光で動いて物理的な波になる。粒子はその場から流れていくわけでなく、振動が伝わり連動することで波になっていく。
そういう現象を表現するのにはドットが良いと思ったんです。
いわゆる波型などいろいろ試しましたが、最も揺れや、陰影の変化を細かくとらえるのは最小単位の丸だなと。シンプルだからこそ、外部からの影響による変化が一番よく出るし、変化した時の意外性があって面白いと思いました。
ドットのサイズも色々検証しましたが、立体感と動きが一番良く出すならばこのくらいかなと。
白に絞ったのは、色の要素を使わずに、光の透過と影の落ち方で色の印象を変えることを目指そうと考えたからです。要素を絞ることで、シンプルに強い作品にしたかったので!


C子:要素を絞ることでシンプルの中に強さが出てくるんですね!あ、あと両面にプリントをしていますがどのような効果がありますか?
篠崎:両面プリントはこの制作の要と言えるほどポイントが詰まっています。
初め両面プリントのねらいは、布を安定的に縮ませることでした。片面からプリントすることがシルクスクリーンのセオリーであるということもあり、片面からしかプリントをしていませんでしたが、少しの刷りムラなどで丸の形が綺麗に縮まないことが問題でした。
どうしようかな、と裏返したら表とまた違う面白さがありました。そこから裏面も活かせると思い、両面にプリントしてみると両面からプリントしたほうが、固定されて、ある程度形状を保つ上に伸縮性、プリーツができることが分かったんです。
それに加えて、裏表で丸の位置のずらし方の違いで、布の縮み方も変わることと、透かした時に、両面の丸が重なりレースのように見える表現ができることを発見しました。
両面プリントはこの制作の中で、問題の解決と意匠性の向上につながった私的大躍進でした!


C子:完成した作品の感想を聞かせてください!
篠崎:100%の満足ではないんですけど、自分的に面白いテキスタイルができたことに関しては達成感があります。発泡プリントで加工することで、フラットだった布が空気を孕み、光や風を受け止める。そんな時の変化を映し出すスクリーンのようなテキスタイルをつくることができました。
最終的にカーテンのような形にまとめたけど、もっと思い切って奇抜にしたり、反対にもっとシンプルに布だけで見せる作品にしても良かったかな、とも思ったり。
質感の面白さに振り切って、人が触れることで楽しめたりするようなものとかもよかったかも。
卒業制作は終わったけれど、この布やサンプルたちがあまりにも可愛いので、何かにしたいなと思案中です、、、
C子:最後に、クラフトトのバインダーを使ってプリントしてもらいました。感想をいただけると嬉しいです!
篠崎:私が制作で使用していたものよりもサラサラとしていて刷りやすい印象です。粘度が低い分、薄く、表面がきめ細かく仕上がりますね。色を混ぜた時も、彩度が高くて綺麗だと思います!
クラフトトの発泡バインダーでのプリント

クラフトトの発泡バインダーでのプリント


ライトグリーンの発泡バインダーでプリント

発泡バインダーをプリント後、乾燥させてヒートガンで熱をかける

熱をかけることで発泡バインダーが膨らむ

ライトグリーンだったバインダーが膨らみパステル調の色に変化

熱をかけながらプリーツを作る

裏からも熱をかけることで膨らみやプリーツをコントロールしている

完成した発泡バインダーのサンプルと篠崎さん
C子:篠崎さんの発泡プリントをただのプリント表現としてだけでなく、凹凸を出すことで視覚だけでなく触覚も楽しめる作品作りに驚きました。発泡バインダーを本当に熱心に研究されていていて感動しました。
本日はお忙しい中貴重なお話だけでなく、サンプル制作までしていただき、ありがとうございました!