2023/09/04 08:54
C⼦:今回の「教えて!クラフトト!」は多摩美術大学のテキスタイル専攻を3月に卒業したばかりの新社会人の篠崎春花さんをお迎えしました。卒業制作の学外展で発泡プリントを用いた作品を拝見して「ぜひお話を聞きたい!」となり、取材の連絡を取りました! 自己紹介からお願いできますか?
篠崎:お招きいただいてありがとうございます。篠崎春花と申します。
春から内装材メーカーで壁紙の企画の仕事をしています。インテリアが好きなこともあり、毎日ワクワクしながら過ごしています。
大学では空間におけるテキスタイルデザイン、特にシルクスクリーンプリントを用いた柄のデザインを学んでいました。テキスタイルの色、形、質感が与える空間への影響を考え、そこに立ち上がってくる“心地よい空気感”を大切に制作していました。

C子:ご丁寧な自己紹介をありがとうございます! 早速ですが、篠崎さんの発泡プリントを施した卒業制作 ” DOTS PLEATS wall ”のことについてお聞きしていきたいと思います。
篠崎:子供の頃、熱をかけると膨らむモコモコペンで遊んだり、モコモコの英字プリントのTシャツを着ていたりしませんでしたか?私は、大好きでした。けれど、こんな小さな部分のためだけに生まれてきた技法だとしたら悲しすぎる!と子供ながらに思っていたのを覚えています、、。
C子:子供の頃から発泡プリントについて疑問を持たれていたんですね、、すごい! その疑問が大学の卒業制作に繋がっていくなんて素敵な話ですね。
篠崎:今回の作品は発泡プリントで模様を作りたかったわけではないんです。
大学で発泡プリントと再会して、刺繍のような柄表現などに発泡バインダーはよく使用されているけれど、なんで柄にとどまっているのだろうとやはり疑問に思いました。柄という装飾ではなく、発泡の“膨らんで布を引っ張る性質”を使ってできることがあるのでないか、と。そういう考えもあって、ただ柄でみせるのではなくて、発泡の性質を使って、空間を彫り起こすような、立体的なテキスタイルを制作しようと決めました。

篠崎さんの卒業制作 ” DOTS PLEATS wall ”

C子:篠崎さんのお話を聞いていると装飾より機能に興味がありそうですね、今までのゲストの方達とは手法が違っていて興味深いです。今回はどのような進め方で制作していったんですか?
篠崎:卒業制作の1つ前の課題が産学協同研究で、ホテルの会議室に飾るパネル貼りの作品を発泡プリントで制作しました。当初は卒制と同じく白に絞り、発泡プリントした柄の凹凸の陰影が、人の動きや照明などの外部環境によって変化して見えるものを目指していました。けど進めていく上で、無機質なホテルの会議室には色の要素が入った方が良いと考えを改めて、波のかたちをブルーからグリーンのグラデーションにしました。この作品はホテルというクライアントがいるものだし、自分のやりたいことだけをやるのは違うと思ったので色彩の要素を使って良かったと思ってます。

産学協同研究の作品サンプル


C子:なるほど〜、1つ前の課題が卒制に繋がっていくんですね。
篠崎:そうですね、この課題を経て発泡プリントの可能性を再確認して、卒制ではひたすら追求してみようと思いました。なので”発泡プリントの研究”が私の卒業制作の軸です。
今回たくさんの発泡プリントのサンプルを制作しました。
色、柄、テキスタイルの素材、バインダーの種類など、色々な組み合わせを試しました。
ウルトラスエード®︎(東レの繊維技術を駆使した高感度・高機能スエード調人工皮革)に発泡プリントしたものが立体的になるのが面白くて、最初はオブジェになるのではとか、ギミックのあるテキスタイルを作ろうなどと考えました。サンプルを進めてく中で、黄緑色の発泡プリントしたものの光が透けた時に透過する色が綺麗だったので、照明にしようか、、、光の効果を得たときに印象が変わる布は、、?というように進展していきました。

たくさんのサンプルは丁寧にファイルされている

1つ1つのサンプルに説明タグをつけてまとめている


篠崎さんのたくさんのサンプルを拝見し、その制作プロセスにどんどん引き込まれていくC子。
お話の続きは後編にて!お楽しみに!