2023/05/02 13:50
前回に引き続き、ゲストはKalappo(カラッポ)の前川さんです。前川さんの考えるテキスタイルの魅力をお話しいただいた後編です。
C子:今回シルクスクリーンプリントとインクジェットプリントの異なるテクニックを使われていますが、どのあたりに違いを感じますか?それぞれに気をつけるところはありますか?
前川:それぞれ良い所と悪い所があると思います。
シルクスクリーンプリントは、色が本当に綺麗で力のある色をすぐに出せたり、オパール加工や塩縮、発泡など加工の方法も幅広く奥深いです。学べば学ぶほど、自分なりの表現ができるようになるのが魅力だと思います。
マイナスな点をいうと、1色ごとに版が必要になってくるので費用が掛かります。なので量産しないと元が取れません。また版の大きさに限りがあるので、あまりに大きいリピートは難しい。
インクジェットプリントはデータをそのまま印刷できるのでリピートの大きさや色数に制限がないのが良い点です。あと、繊細なグラデーションが表現できるのも魅力で、最近のインクジェットは写真も綺麗にプリントできますよね。ですが、力のある色が出しづらいのがやっぱり難点で、印象の弱い出来上がりになりがちです。
あと、プリンターで印刷するだけなので、印刷という作業自体にアレンジがしにくく、個性や自分らしさを出しにくいとも感じます。
刷る媒体も印刷会社によってある程度決まってきてしまうので、手軽ではありますが、突き詰めて何か作るというのが難しいです。
C子:クラフトトのバインダーを使ってみた印象は如何ですか?
前川: プレーンでクセがなく使い易いと感じました。学生時代は、数人で注文をまとめて問屋さんから買っていたのですが、一般客には販売して貰えません。なので卒業してからは市販で売っているものを購入していたのですが、中には固すぎて使いづらいものもありました。
クラフトトのバインダーは適度な柔らかさがあり、カラーとも混ぜやすいです。
あと、ホワイトバインダーの中でも、隠蔽性の違いなど色々な種類があるのも嬉しいです。
容器の大きさも程よくて、大きすぎず気軽に使えますし、かといって小さすぎず、口の幅が広いのでゴムベラがそのまま入るのも嬉しいポイントです。
いろいろな種類のクラフトトのバインダーを混ぜて実験する
C子:前川さんの考えるテキスタイルの魅力はなんですか?
前川:私が思うテキスタイルの魅力は2つあって、1つ目は手軽に空間を変容させられること。
空間に布一枚あるだけでその場の印象がパッと変わる。空間を変容させる力は、カーテンが分かりやすいですね。壁紙や床材を変えるのはなかなか大変ですし、家具はいくつか揃えないと空間を変容するまではいきません。
カーテンは思い立ったらすぐにでも変えられるし、布の持つ色や柔らかさ、透け感などの違いで空間の印象をガラっと変えることができます。
2つ目は何にでもなれること。
何にでもなれることというのは、文字通りで、テキスタイルでできたモノって身の回りに溢れているなと感じるので。
Kalappoをやっていても、バッグ作ってとか、ブックカバー作ってとか、ありがたいことに周りからたくさんのリクエストをいただきます。リクエストを貰う度に、それだけテキスタイルは色々なモノになれるんだなと実感します。
Kalappoオリジナルのテキスタイル”Tuuli”のランプシェード Photo by Kanako Shokuda
C子:作品づくりのスタートについて教えていただけますか?
前川:コンセプトを元にスタートにするのが望ましいとは思っているのですが、実際はやりたいと思うことからコンセプトを後付けすることが多いです。
今回の場合は、「建物をモチーフに描きたい」と、「白で何か面白いことをやりたい」がスタートにあって、そこから「奥行き」「レイヤー」といったキーワードが出てきて、建物モチーフなら大きいリピートにしたいな、だったらインクジェットかな、シルクとも併用したいな、といった具合に組み上がっていきました。
普段から、使いたいと思っているキーワードは頭の中に散らばっていて。それは他の人の作品を観たり、景色を見たり、音楽を聴いたりする中で出てくるのですが、それらをいくつかピックアップして、今回はこれと向き合おう、という感覚で始めます。
あとは、社会的に求められている事柄、コロナ禍とか、サステナブルとか、そういったものとも結びつけたいのですが、これは中々難しいです。
やりたいことをスタートにするのは、学生時代からの反省もあってそうしています。
大学の授業ではその都度テーマが与えられて、そこからコンセプトを考えるのですが、
私の場合、真面目に取り組みすぎると自分がやりたいことや作りたいものがブレてしまって。自分の中でやりたいテーマがあって、それを課題のテーマに寄せていくぐらいの方が良かったんじゃないかなと、今では思っています。
でないと、こうするべき、に引っ張られてしまうというか、、、
なので今は、コンセプトを最初から固めてしまうのではなく、やりたいこと始動で「これならこういうコンセプトを付けられるな」という感覚で作っています。
C子:最後に、これからやっていきたいことを教えてください。
前川:今までは自分が作りたいものを勝手に作って世に出していたのですが、これからはお客さまからのオーダーを受けたいと思っています。さらには、テキスタイルでモノを作るだけでなく、空間全体のデザインをできるようになっていきたいです。
これは妄想なのですが、飲食店を経営するオーナー様からオーダーを受けた場合、店内の間仕切りとしてテキスタイルを使ったり、それと合わせてランプシェードやエプロンを作っていったり、テキスタイルをお店のコンセプトと結びつけて空間のイメージをカタチ作るというようなことが出来たら楽しいだろうなと思っています。
飲食店の他にも、ホテルの一室やオフィスの中のスペースなど、設計事務所の方とコラボレーションして1つの空間を作る、というのも夢の1つです。
モノとしてのテキスタイルだけでなく、空間を作る1つの素材として、唯一無二のテキスタイルを作っていきたいと思っています。
C子:前川さん、本日はお忙しい中貴重なお話をありがとうございました!
Instagram:kalappo_tx