2023/03/17 11:44

C:今回の「教えて!クラフトト!」はテキスタイルブランドのKalappo(カラッポ)さんをお迎えしました。よろしくお願いします!さっそく⾃⼰紹介からお願いできますでしょうか?


前川:テキスタイル作家の前川沙祐莉です。多摩美術大学テキスタイルデザイン専攻を卒業した後、壁紙メーカーにて企画デザインの仕事を経験しました。3年前にフリーランスになって「Kalappo」というブランドを始めました。

Kalappoでは、日常にカラッポの時間をつくるテキスタイルアイテムをコンセプトに、シルクスクリーンプリントを用いたファブリックパネルや、ランプシェード、エプロン、コースターなどを制作し、販売しています。また、イベントでシルクスクリーンのワークショップも開催しています。


クラフトトのバインダーでサンプルをプリントする前川さん


C:前川さんの考えるシルクスクリーンプリントの魅力を教えてください。


前川:私はシルクスクリーンプリントの作業自体が好きです。オペークインク(遮光するインク)でフィルム原稿を描いたり、製版したり、インクを調色したり。作っている感があるというか、描くだけとか、染めるだけとかではなく、色々な過程を経るのが多分好きなんだと思います。

シルクスクリーンプリントで作られるモノの魅力は、綺麗な色がダイレクトに表現できること。原色に近いようなパキッとした色はもちろん綺麗で、混色しても彩度が落ちにくいです。あと、形のエッジがシャープに出ることも魅力ですね。描いたものの輪郭がハッキリとして、ピントがピタっと合った感じになり、それだけで絵に力が出る感じがします。


PSスクリーン

C:制作のプロセスも前川さんにとって作品の一部なんですね。デザイン画はどのように制作されるんですか?


前川:私は壁に模造紙を貼って原画を描きます。学生時代にそのスタイルで描き始めて、今でもその制作方法は変わってません。

原画を描く時間を大切にしていて、アクリル絵の具などでスケッチをたくさん描きます。

その中から選んだデザインを実寸で描いて詰めていくという、とてもアナログな方法で制作しています。


デザイン画の制作風景


C:今回描いている作品のモチーフはなんですか?


前川:今回は、とある住宅の写真からパターンを描きました。「建築物」は、学生時代から好きなモチーフの1つです。

建物の輪郭や窓枠、屋根などが、景色の中に線を描いているように感じられる時があって、それらのリズムやバランスが心地良いと心がときめきます。平面上で描いているのに向こう側に世界が繋がっているかのような奥行きを感じられることも、建物というモチーフの魅力の1つだと思います。



C:前川さんのフィルターを通すととある住宅の建築物もこんな素敵なデザインに変わるんですね。色を選ぶ時に意識していることはありますか?


前川:見るだけで活力になるような、力のある色、また、気持ちが晴れやかになる色を意識して選んでいます。あれこれ考えずに一目惚れで選んでほしいと思っているので、パッと見で好き!と思って貰えたら嬉しいです。

あとは、純粋に自分の好きな色を使っている方が楽しいので、好きな色を選択することが多いです。


C:今回のデザインは白のバインダーの使い方が面白いと思いました。その狙いはどのような点にありますか?


前川今回はテキスタイルの中に奥行きを表現したくて、ホワイトのバインダーを使用しました。

色で刷られたところにホワイトバインダーを重ねたり、ホワイトバインダー同士を重ねたりして、平面の生地の中でも奥に空間が広がっているような表現が出来たら良いなと思っています。

モチーフとなった建築物も元は奥行きのあるモノなので、パターンの中でも別の形で奥行きを表現したいという思いと、「白」という色も今回のテーマの1つなので、色々な「白」を表現したいという思いでこの方法を考えました。

今回カラーの部分はインクジェットプリントで刷っているのですが、それだけだと色としても布としても印象を軽く感じました。ホワイトをシルクスクリーンプリントで重ねることで、素材感の違いがテキスタイルに深みを出し、作品としての魅力に繋がったと思います。


C:すごくたくさんのサンプルを試されるんですね。


前川:より良いものを作るためでですが、サンプルを作っているのが一番楽しい時間です。

たくさんやるつもりがなくても、いざやってみると、こうしたらどうなるんだろう?という疑問が生まれてきて、どんどん増えていってしまいます。多分テキスタイルをやっている人には、こういった人は多いと思います。失敗から偶然生まれるものもあるし、そこから新しい考えが広がっていったりするので。

特にテキスタイルの分野は、理論で考えてもその通りに行くとは限らないので、机の上で考えるよりも、実際に手を動かしながら考えた方が早く答えが出ることが多いと感じます。


前川さんの丁寧に作り上げていく制作風景に興味津々のC子。さらに質問を重ねて前川さんの作品づくりの魅力を掘り下げていきます。

⇒後編に続く


今回使用したクラフトト取り扱い道具