2022/02/08 16:59
今回もpole-poleさんに製版を教わりました。
シルクスクリーンプリントの中で一番、重要な作業を見ていきましょう。
C子:早速なんですが「シルクスクリーンプリント」は、なんで「シルクスクリーンプリント」という名称なんですか?美大卒の友人は「シルク」と略して呼んでました。
pole-pole:昔は絹を材料に使ってたんです。透けて見えるような網目の細かい布のことを紗(しゃ)と呼ぶんですが、絹紗を使っていたことから「シルクスクリーン」と呼ばれてました。現在は絹より耐久性のあるポリエステルなどの化学繊維が主に使われてます。なので「シルク」という言葉を取り除いてスクリーンプリント、スクリーン印刷と呼ぶ機会も増えていますね。
C子:「シルク」じゃ通じなくなりますね、友人に伝えておきます。笑
では「シルクスクリーンプリント」のプロセスについて詳しく教えてもらえますか?
pole-pole:シルクスクリーンプリントは、孔版画(こうはんが)技法の1つです。孔という漢字は「あな」とも読むんですね。製版をする時にインクが通過する孔(あな)とインクが通過しないところを作ります。その孔の部分にだけインクが通過することで印刷されるという仕組みです。

あ、専門的な言葉が増えて難しい話になってきました、、?
C子:あ、すいません、若干置いていかれています。。。笑
pole-pole:ですよね、こちらこそごめんなさい。笑
実際に体験してもらうのが一番理解できる方法だと思うのでクラフトトのロゴTシャツを一緒に作ってみましょう!
C子:ありがとうございます!楽しみです!
● 製版について
紗張前のアルミ枠
pole-pole:これが紗が張られる前のアルミ枠です。この枠にポリエステルの紗を引っ張って接着剤で貼り付けていきます。その工程を紗張りと言います。紗には網目の細かさ(メッシュ)があって数字が大きくなるほど目が細かくなっていきます。細かい方が精密なデザインを再現できますが、その分インクが詰まり易くなるので適切なメッシュ数を選ぶ必要があります。布地のプリントは80〜120メッシュくらいが多いですね。紙にプリントする場合はもっと細かいメッシュのものを選択します。

pole-pole:クラフトトで扱ってるPSスクリーンは紗がバイアス(斜め)に張られています。
バイアスに張られている方がインクの透過量が多かったり、網点製版する時にモワレになることを回避でき、完成度の高い製版が可能になります。ここらへんも難しい話なのでまた別機会に詳しく説明しますね。笑
C子:はい、また別機会にぜひ。笑
pole-pole:紗張り後のスクリーン版に感光乳剤を塗布し暗室で乾燥させたもの、それがPSスクリーンです。PSスクリーンは職人さんが1枚1枚丁寧に乳剤を塗布しているので感光作業で失敗することはまずない素晴らしい商品です。僕らも学生時代は自分で乳剤を塗布していたのですが塗り方が悪くて感光を失敗することもありました。
次はフィルム原稿の準備ですね。
先ほど少し話しましたが、フィルム原稿は光を通す場所(フィルム部分)と通さない場所(黒インク部分)をはっきりと作るのが大事なポイントです。遮光されているものならば原稿になるので、例えば黒い紙を切ってそれを原稿にすることも可能です。
C子:紙も原稿になるんですね!切り絵とかやってみたいです!

pole-pole:この2つのフィルムを比べると黒インクの厚みの違いがわかると思います。左は光を通してますよね?右のフィルムようにきちんと遮光されている方が感光作業の時に失敗しません。この印刷ができるプリンターがあまりなくて古い機種ですがこのプリンターを大切に使っています。フィルムも専用の物を使用しています。お願いしてクラフトトさんでもお取り扱いしてもらうことになったんですよ。笑
※フィルムプリントもご依頼いただけます。
C子:ほんとだ、全然インクの厚みが違いますね。
フィルムの左右反転に注意
pole-pole:このフィルムを乳剤が塗布されたスクリーン版にセロハンテープなどの透明なテープで貼り付けます。この時、左右反転して貼らないように注意してください、結構このミスをやってしまう人多いです。文字とか入ってる場合、左右反転して読めなくなります。苦笑
C子:私、やってしまいそうです。。気を付けます!
pole-pole:露光機のガラス面にフィルムを貼り付けて、その上にスクリーン版を乗せても大丈夫です。
今日は撮影をしてるので明るい場所で作業してますが、本来は暗室で行います。紫外線が入ってくる場所で作業すると露光機に当てる前に乳剤が感光していくので注意してください。
ガラス面は綺麗に
pole-pole:まず露光機のガラス面を綺麗に掃除します。話が前後してしまいますが、乳剤が感光されていってしますのでフィルムを貼る前に掃除は済ませておいてください。汚れていたり、ゴミなどがあるとピンホール(意図しない場所に孔が空いてる部分)が空く原因になります。
感光乳剤は紫外線が当たることで硬化します。フィルム部分は光を通すので感光され乳剤が硬まり紗に固着する、黒いインク部分は遮光されて感光せず乳剤は柔らかいままなので水で洗い流すと黒インク部分が孔が空くという仕組みですね。

pole-pole:感光が終わったら、水を溜めておいたシンクに5分ほど漬けておきます。漬けておくことで乳剤が柔らかくなっていきます。
C子:あ、乳剤の色が変わってロゴが浮かび上がってきました!
pole-pole:感光することで乳剤が硬化されて青く変色しました、感光されていないロゴ部分だけが黄色のままなので浮かび上がように見えてきましたね。
シャワーで乳剤を落とす
pole-pole:十分に乳剤をふやかしたらシャワーで洗い流します。洗い流す時は必ず両面から水を当てて流してください。片側だけで抜けたと思っても逆側に乳剤が残っていることがあります。
平置きにして日光に当てる
pole-pole:水でよく洗い流したあとはタオルなどで水分を拭き取ります。その後、平に置いて日光に当てて乾かします。日光は紫外線が強いので当てることによって乳剤がより感光されて壊れにくい版が出来上がります。
C子:クラフトトのロゴマークは細い線もありますが綺麗に出てますね。線はどれくらいの細さまで出るんですか?
pole-pole:クラフトトの色見本を作る時に試しましたが1pt(約0.35mm)がギリギリで0.5mmは最低でも欲しいなって思いました。あと製版はできたとしてもプリントする時にかすれたり、マット系の硬いバインダーは孔を通過しなかったりするので慣れてないうちはなるべく細すぎる線は避けた方が良いと思います。
C子:なるほど、プリント技術も必要ですもんね。
pole-pole:もしピンホールが空いた場合は十分に乾燥させた後に、感光乳剤やマスキンングテープなどで孔を塞ぎます。これで製版作業完了です。
pole-poleさんの製版で驚いたのはデザインを印刷するフィルム原稿へのこだわりでした。トレーシングペーパーや普通紙に印刷してオイルなどを塗って原稿としている方も知り合いにいましたがどうしても光が透過してしまうと話していました。
pole-poleさんは、印刷するプリンター、フィルムを専用の物を揃えて印刷しています。
写真でもあるように光に透かすとその差ははっきりわかります。pole-poleさんに聞くとプリントするときにエッジがはっきりきれいにプリントできるとのことです。
次回は、そのプリントの作業とインクの調色の作業です。インクの調色にもpole-poleさんのこだわりがあって面白い記事になっています。ぜひ、読んでみてください。