2022/02/18 11:07
● 調色について
pole-pole:次は色糊作りです。今回クラフトトさんからの依頼でクラフトトカラーの色見本を僕らで作成しました。基本となるソフトバインダー(カラー)とマットバインダー(カラー)に0.5%と5%のカラーを混ぜ合わせて白、グレー、黒の布地にプリントしました。この色見本から基準となるカラーを選んでみましょうか?
C子:やっぱり色見本があると良いですね、ありがとうございます!ソフトとマットのバインダーの違い、色付きの生地にプリントすると色の見え方が変わることがよくわかる資料ですね。
そしたら私はクラフトトカラー15のグリーンFLBの0.5%が好きな色味なのでこれを基準に、少し濃くした色にしたいです
クラフトトカラー色見本
基準となる色を探す
バインダーの重さを計る
pole-pole:少し濃くとのことなので1%あたりを狙ってみましょうか。まず最初にバインダーの重さを計ります、今回はソフトとマットそれぞれ100gずつ。そこにクラフトトカラーを1cc、注射器で測って混ぜ合わせます。グラムとccは単位が違うのですが、僕らはこのやり方で調色してデータを取ってます。
バインダーとカラーは色ムラが出ないようによく撹拌します。混ぜ合わせたら色見本用の版でプリントして色を確認します。
注射器でカラーを測る
よく撹拌する
混ぜ合わせたバインダー
色見本用の版にプリントする
色を確認する(左からマット1%、ソフト1%、ソフト0.9%)
pole-pole:色の雰囲気、どうですか?
C子:すごく良い感じです!ソフトバインダーはプリントすると色がだいぶ薄く見えますね。
pole-pole:ソフトバインダーは布地に染み込むので見え方が変わりますよね。あと素材が変わると色の見え方も変わってくるので色サンプルも素材ごとに毎回プリントして確認します。
それに対してマットバインダーは布の上に色が乗って固まるイメージです。詳しいバインダーの話はまた別機会にしますね。
Tシャツにシワが出ないように丁寧に伸ばす
pole-pole:次はTシャツを中敷の板に入れてシワが出ないように丁寧に伸ばしていきます。中敷の板に粘着性のある樹脂やスプレー糊が付いているので板にTシャツをぴったり貼り付けることができます。Tシャツと中敷の間にゴミや糸くずが入っていたり、Tシャツのシワがあるままプリントするとそのテクスチャーが影響してインクにムラがでます。なのでなるべく凹凸がなく平坦になっているかを刷る前に確認してください。Tシャツの場合、リブや縫い目など段差がある付近も平坦ではないのでインク溜まりができるのでムラがなく均一にプリントしたい場合は避けた方が良いです。
C子:プリントするものはなるべくフラットな状態にすることが綺麗にプリントするコツなんですね。
pole-pole:Tシャツと中敷の板がしっかりと貼り付いてることも複数回プリントする時は大事です。プリント後、版を持ち上げた時にTシャツも一緒に持ち上がってしまって、柄合わせがうまくいかないことがあります。
直列式Tシャツプリント台
あとpole-pole LABにはクラフトトさんの直列式Tシャツプリント台もあるので量産する場合はこちらを使います。レールとポイントが付いているので同じ場所に繰り返しプリントすることができます。
pole-pole:続いてプリントする位置を決めます。Tシャツの場合、基準として襟のリブから高さを測ることが多いですね。マスキングテープなどで印をつけておきます。
プリントする位置を決めるために高さを測る
決めた位置にマスキングテープで印をつける
pole-pole:位置が決まったらいよいよプリントです。版にインクを乗せる前にバインダーとカラーの混ぜムラがないように再度よく攪拌します。インクは孔(あな)の空いてるデザインの上部に置きます、この時にデザイン部分になるべくインクを置かないように気をつけましょう。ソフトバインダーなど柔らかいインクは孔を通過し、プリントにムラがでることがあります。
乗せるインクの量は気持ち多めがおすすめです、余ったインクは容器に戻してまた使えるのでの少なめより多めの方が安心です。
混ぜムラがないように再度攪拌する
デザインの上部にインクを置く
pole-pole:プリントする時はスキージの角度が大事で60度くらいが良いと思います。60度をキープして自分側に引いていきます。スキージを手前に寝かしすぎるとインクが入り込みすぎてにじみの原因になります。あとインクが入り込みすぎるということはインクを使いすぎてることなので、プリントの途中でインクが足りなくなることがあります。逆にスキージを立てすぎるとインクが孔を通過せず、かすれの原因になります。
力加減は個人差があるので説明が難しいのですが、男性は60〜70%くらい、女性は80〜90%くらいの力で引くと良いと思います。それなりに力は必要ですが、フルパワーだと力が入りすぎって感じですね。力が入りすぎるとスキージが寝かしすぎになることが多いので60度をキープすることを意識してください。
スキージの角度は60度くらい
60度をキープして自分側に引く
pole-pole:プリントする回数は上から2回がオススメです。プリントする回数が多ければ多いほど線は太くなり、色も濃くなっていきます。先ほど言い忘れましたが、色見本のサンプル刷りも本番刷りと同じ回数で統一します。
C子:プリントする回数で線の太さや色も変わるんですね。ちなみにすごく細い線を出したい場合は1回刷りが良いんですか?
pole-pole:シビアにいくなら1回刷りですね、けど1回刷りは失敗した時にフォローもできないので慣れないうちは2回刷りが良いと思います。例えば1回目にプリントしてインクが足りなくなった時も2回目のプリントである程度フォローすることができるので。
版を持ち上げるとインクが孔を通過している
同色の場合は版を洗わず連続でプリントできる
pole-pole:プリントが終わったら版を持ち上げます。お、良さそうですね。
C子:細い線まで綺麗にプリントされてます!
pole-pole:同色の場合は版を洗わずに連続でプリントできるので、グレーとブラックもプリントしていきます。
余ったインクは容器に戻す
プリントが終わったら手早く水洗いをする
pole-pole:プリントが終わったら余ったインクを容器に戻し、版と道具を手早くスポンジで水洗いします。水性の顔料は時間が経つと固まっていくので版の目詰まり(孔がインクで埋まって通過しなくなる)に注意してください。
C子:あ、前にプリントした時にモタモタしていたらインクが固まり始めてて版洗いの時、とても大変な思いをしました。。。スポンジでゴシゴシ洗ってもインクが落ちなくて、しかも擦りすぎて乳剤部分が剥がれてしまったり。涙
pole-pole:インクは一度固まってしまうと版から落とすのが大変なんですよね、経験されたようにスポンジなどで擦りすぎると版を壊す原因になります。
なのでプリント作業の時は印刷が終わったら手早く水洗いしてください!
C子:はい、気を付けます!!
プリントしたTシャツたち
ハンガーに掛けて乾燥
pole-pole:一連の流れはこんな感じですね、体験してみて如何でしたか?
C子:とても丁寧に説明してくださってわかりやすかったです。ありがとうございました!
pole-poleさんは、ワークショップなどで使用するインクも数値を測っているそうです。なんとなくできた色彩ではなく自分達で狙った色彩をいつも意識しているとのことです。pole-poleさんに制作していただいた色見本(ソフトバインダーカラー・マットバインダーカラー)は、同じものがpole-poleさんのLABにも保管されていますので実際の顔料の色が気になる方は、pole-poleさんのLABに行ってみてください。
次回は、色を布地の上に留めておくバインダーについて詳しく教えてもらおうと思っています。少し時間があくかもしれませんが今から楽しみです。